2010年03月11日

構造計算−素人療法の怖いお話し

ある木造2階建てを依頼した建築主の方が、「耐震等級3の建物で・・」と依頼されました。その方の図面を見てみると、やたら滅法、至るところに耐力壁が配置されています。
私は、「これは、耐震等級3の必要壁量を計算出来ずに、手当たり次第に多く入れたのでしょう。多く入っている分には問題はありませんが」と返事をしたのですが、それぐらい多くの耐力壁が入っていました。今まで耐震性を高くして欲しいという依頼を受けると、訳も分からず、いたずらに耐力壁を多く配置する設計者も多いのですが、今回の話はその上手を行く話です。

そのあと、その方から、「余裕度が1.1しかないのですが大丈夫でしょうか」という言葉と共に、構造計算書が送られてきました。

それを見てびっくり。

なんと建物の自重が通常の1.5倍ぐらいの重さで入っていたのです

■必要な耐力壁の量は・・
その建物が受ける地震力は、建物の重さに単純に比例します。1階の場合)。軽い建物ほど弱い地震力=少ない耐力壁でよく、建物が重くなるほど、受ける地震力も大きくなり、必要な耐力壁も多くなります。

結局、その建物は、自重計算をあまりに過大に計算していたために、地震力が大きく計算され、その結果必要な耐力壁の量も多く計算され、それにつれて、至るところに耐力壁を配置せざるを得ない結果になったようなのです。

自動車に例えると、リッターカーの車両重量は平均1.3トン程度。クラウンクラスで1.7トン程度です。そのために、エンジンは1,000ccとか、2,000ccと積み分けているのですが、今回の話は、車両重量を3トンと計算してしまったために、必要なエンジンが4,000ccだ・・という風に計算されたのと同じ事なのです。

■費用をケチっても
ある構造設計者のブログを見ていると、「構造設計者に外注する費用が惜しくて、自分でするのは良いが、間違ったままでやっている人も多い」というのを読んだことがありますが、まさにその状態です。

どんな分野でも計算ソフトがあれば勝手に出来るのではありませんね。その分野の基礎的な知識なり、経験なりが必要不可欠ですが、ソフトがあればなんでも出来ると思いこんでしまう素人療法がなせる技という気がします。


ちなみにその建築主の建物は、耐震等級3に必要な耐力壁の量のほぼ2倍の耐力壁が配置されていたのです。


      10-0311.gif

■経験の大切さ
今回の設計者も始めての「耐震等級3だ」と気合いを入れて、構造計算ソフトを買ったのでしょう。そして、今までに耐震等級3の依頼を受け、その都度構造設計事務所に外注し、経験を積んでいれば、仮に自分でソフトを動かしてみても、出てきた答えがあまりに過大な耐力壁の量であればおかしいと、すぐに気がつくのですが、そういう経験無しに一足飛びにソフトだけを買ったのでしょう。
ところが、いくら計算ソフトが簡単で使いやすくなったところで、計算結果の間違い探しは、経験でしか補えないのですね。(計算式は合っているのだから、例外なく入力と仮定の間違いという人為ミス)


■一歩間違えば、そして、間違いに気づいていなければ
今回は過大側なので実害はないのですが、こういう計算ソフトを、その分野の基本的な知識も無しに間違って使うと、取り返しのつかない失敗をしそうです。
そしてなにより、自分が間違っていることを知らずにいる事の方がもっと怖いのです。そういう設計者がときたまいるようですょ。


以上、チョット怖い業界のお話しでした。



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2009年09月29日

変わる大工さんの仕事内容

 今日も少し大工さんの仕事を続けます。

 昔・・といっても今からせいぜい30年程度前までは、大工さんが構造的な計画をしていました。柱や梁をどう組んでいくか、1本1本をどんな大きさにするかを考えること自体が、いわゆる棟梁の一番大きな仕事でした。

 筋交いを、どこに、どの程度の量を入れる。柱の位置や梁の太さを決める。といった住宅の構造に関わる全てにタッチしていました。

09-0929.jpg しかし、工業化、近代化、大量生産が進むにつれて、これら構造的な部分は大工さんが決めるのではなく、筋交いの位置や量は建築士が決めるようになり、柱の配置や梁の太さはプレカット工場で決められるようになっていきました。

 つまり、昔ながらの、大工さんが構造のことはなんでも決めていた、という時代から、今では、その様な事にはノータッチの時代に変わっていきました。

・いわば、構造に関与しなくなった大工さん


 その代わり増えてきたのが、断熱や気密と言った仕事です。
 30年ほど前は、やっと断熱材とかいう材料が出始めた頃で、これを入れておくと良いらしいからと、薄い薄い断熱材がようやく使われ出した頃でした。

 しかし、今では断熱材を入れるのは大工さんの当たり前の仕事で、防湿気密シートを使った気密化工事も大工さんが行っています。

 でもなかなか変わらないのが人間の意識です。

 建築主は、構造面は大工さんが知っているのだろう、タッチしているのだろうと思われがちですがそうではありません。耐震性も、柱や梁の太さも大工さんが決めているのではありません。

 反対に昔のままの意識が残る大工では、せっかくの断熱材を荒っぽく、隙間だらけに無造作に入れてしまう風潮が見られます。


 時代はどんどん変わっていきます。その変化は非常に速いです。それは、「大工」という言葉は残っても、その仕事の内容を変える所まで変化しようとしています。


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2009年09月28日

中庸化する大工の腕前

 今日は誰もが抱いているある誤解をご説明しようと思います。

 それは、『大工の腕』について

 家を建てるのは大工・・・と思われていますし、事実、工程の半分程度は大工さんが工事現場で仕事を進めています。だから、どうしても大工の腕によって、建物の完成度も変わってくるのだろうと思われがちですね。

 良い腕の大工に建てて欲しい〜あるいは良い腕の大工に当たって欲しい〜と考えるのは誰しも同じだと思いますね。


09-0928.gif>■1本1本の刻みからプレカット加工へ
 ところがここに大きな思い違い・・というよりも時代の変化があります。大昔は確かに大工が住宅の1本1本の木を刻み、棟上げをしていました。そのため大工の腕によって建物に生じる狂いも変わっていました。でも、今ではプレカット工場が加工するため、大工が木を刻む・・ということは無くなりました。加工が均一化し、大工の仕事はプレカット工場が加工したものを組み立てるだけの仕事に変わりました。

■部材は既製品
 大昔は、ドア枠一つにしても大工が枠材の一つ一つをかんなで削り加工して造っていました。しかし、今は既製品のドア枠を貼り付けるだけです。内装造作で大工が腕をふるう場面は完全になくなりました。

 つまり、最近の大工の仕事は、一から加工するのではなく、半加工された物を組み立てていく、取り付けていくのが大工の仕事になりつつあります。
 そのため、大工の三種の道具はノコギリ、金づち、かんなではなく、電動丸鋸と自動釘打機に変わりました。

■誰でも使える建材・工法
 また、建材メーカーや工務店の立場から言えば、腕のたつ者だけが扱えるような難しい建材では、一握りの腕のたつ大工しか使えません。これでは建材も売れません。ほどほどの腕があれば誰でも取り付け出来るような建材の方が好まれます。そういう意味で、出来るだけ加工しやすい、組み立てやすい部材が開発されるようになり、そこに大工の腕が発揮される場面は無くなりました。

■中庸が大事な大工
 このような材料や建材の変化、あるいは今までの大量の住宅供給で、一握りの腕のたつ大工が必要なのではなく、中庸な大工が数あった方がよい・・という流れに変わっています。

 つまり、右のイメージ図にあるように、昔ほど大工の腕の差に大きな差が無く、ほどほどの腕の大工が増えています。 でも、反対に増えているのは、腕の悪い大工です。
 それは建売住宅の氾濫で、腕が悪くても、腕前を上げなくても仕事があるために、腕前が低いままに推移する大工も多くなっているのです。

 昔と今では、大工に必要な要素も変化すると共に、昔のような腕を競うという場面もなくなり、加工品の取付ばかりで腕を使う場面も無く、大工の腕の差を意識する必要のない現代になっているのです。

 腕の良い大工・・というのは、「中庸な大工の中の、すこし腕の良い大工」と捉えた方がよいように思いますょ。



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2009年08月21日

マメに打ってます!

 これは、サポートサービスを受けられているお客さんからの話ですが、ある方が欠陥住宅などが気になり、昨日の構造用合板の仕様が自分の家でも取り入れられているので、工務店の社長に、『釘はどのように打っていますか』と聞きました。

 その人の意図としては、このような釘を、このような間隔で打っていますとか、法律でこのように決められているから、このようにしています・・といった具体的な返事を期待していたようなのですが、かえってきた答えは、

 『マメに打ってますよ〜』

 というお気楽なご返事。

 まぉ、素人相手にギャグ、あるいはしゃれのつもりで言ったのならかわいらしいのですが、どうもそうではなく、とにかくたくさん打たないとダメだ・・と言う程度の認識だけだったようなのです。

 これもよくある返事に、

 『大丈夫ですよ〜』というものがあります。


 下の写真。

 『いやぁ〜。チョット力が入り過ぎちゃいました〜』

 ・・・で済めばいいのですが、構造用合板など釘をつかう耐力壁の場合、釘がめり込むほど耐力壁としての強さは減っています。厚みの半分もめり込めば、所定の強さは無くなります。つまり、耐力壁として機能しない・・・・・。

     09-0821.jpg

 まぁ世の中、
 『ちゃんとやってね!』
 『はい。ちゃんとやりますよ』
 で済めばこれほど楽なことはありませんし、ワタシのような仕事など全く必要なくなるのですが、楽しい、お気楽な返事の裏側に、怖〜い事実が時々隠れていることを知っておきましょうね。。



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2009年08月20日

合板を貼っていれば強いんだろう?!

 今日と明日は、「ウソのようなホントの話」を少しだけご紹介します。

 最初は外壁に貼る合板の話です。
 2X4工法の場合は、面として耐力壁を作る必要がありますから、最初から構造用合板を外壁に貼っています。しかし、軸組工法では筋交いで耐力壁を作れることから、伝統的に筋交いだけに頼って耐震性を確保している建物もあれば、「モノコック構造だ・・」「2X4工法の良さをミックスした工法だ」といって外壁に構造用合板を貼って筋かいなどの耐力壁と併用する方法があります。(ダイライトやOSB、MDFといった面材も耐力壁として使えます)

09-0820.gif そして、意外と誤解が多いのが、「外壁に構造用合板を貼っていれば、それだけで強くなるのだ」という間違った知識のままに施工している建築会社も未だに存在しています。

 外壁が強くなるためには、(耐力壁として機能するためには)
1.N50という規格の釘を使う
2.合板の外周全てに150mm間隔で釘を打つ
3.合板を継ぐ場合は受け材が必要
の3点を守らなければならないのですが、その全てを知らずに施工している会社もいるのです。

 『この建物は、構造用合板を使っているから強いんです』なんて大きく宣伝している会社の中にも、こういう基礎的な知識無しで工事をしている会社も見かけます。

 構造用合板を耐力壁として使っている建物では、工事中一度はこの3つのチェックをしておいた方が良いですよ。

注:N50の釘かどうかは、釘頭の直径が約6.6mm程度あればよく、4mmとか、5mm程度であれば、N50ではない、もっと細い釘が使われている可能性があります。(その場合、所定の強度はまったく出ない)
注:この説明は軸組工法の構造用合板を使う場合の規定です。他の材料では釘間隔が100mm以下となっている材料もあります。また、2X4工法では、合板外周部の釘間隔は必ず100mm以下です。




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